弁理士が本気で答えるQ&A

特許や商標など知的財産をめぐる様々な疑問について、現役の弁理士が本気で答えるコーナーです。

Q&A形式にありがちな優等生的な建前論や、曖昧な言い回しは避け、独断と偏見を交えながら誤解を怖れずに進めていきます。

最初は、特許事務所や弁理士の選び方、付き合い方など、ネット情報ではあまり見かることのない話題から始めます。

※随時更新中


Q1.特許や商標の出願は弁理士に依頼した方がいい?

Q2.特許事務所、弁理士を選ぶ基準は?

Q3.無料相談でもきちんとした解決策は得られる?

Q4.弁理士にはいつ(どの段階で)相談したらいい?

Q5.特許事務所の料金体系が分かりにくいのですが?

Q6.明細書の品質とは何ですか?

Q7.実用新案は使い道がない?

Q8.部分的にデザインを変えて真似されるのを防ぐことはできる?

Q1.特許や商標の出願は弁理士に依頼した方がいい?

A1.依頼者の経営判断に任せるところが大きいと考えます。

弁理士に限らず専門家に依頼するということは、時間と技術をお金で買うことと同義です。

どこに投資してどこを節約するかを見極めることも経営者にとって重要な資質だと思います。

Q2.特許事務所、弁理士を選ぶ基準は?

A2.これはズバリ、弁理士との相性でしょう。

事務所の規模、経験年数、専門分野、料金など、弁理士を選ぶときの基準となるような目安は一応はありますが、少なくとも独立して事務所を運営している弁理士であれば仕事を依頼するに足る能力は保有しているはずです。

事務所の規模については、お好みでどうぞとしか言えないのですが、一般に小さな事務所の方が弁理士との距離が近いように思います。ですので、話は早い方がいいという人は小さな事務所、格式や段取りが大事だという人は大きな事務所という選択もあると思います。

ただ、あえて言わせていただくとすれば、中小零細企業のオーナーや個人事業主の方は小さい事務所を選ぶべきだと考えます。小さい事務所だと所長弁理士と直に接する機会を得やすいので、経営者同士の目線で話をすることができます。逆に、大きな事務所で新人またはそれに準ずる弁理士が担当になると、もしかしたらストレスを感じることがあるかもしれません。

どの特許事務所を選ぶか、より、どの弁理士を選ぶかが重要なのです。

経験年数は長いに越したことはありませんが、自ら事務所を運営している弁理士であれば十分な経験は積んでいると考えてよいと思います。

なお、弁理士の経験年数やこれまでに取り扱ってきた分野が気になる方は、日本弁理士会が提供する「弁理士ナビ」に掲載されている「通算登録期間」と「特許庁保有取扱分野情報」で確認することもできます。「特許庁保有取扱分野情報」には、特許・実用新案/意匠/商標の区分毎に出願数の上位5位の分類(数字やローマ字)が表示されています。分類の表示に応じて取り扱い実績の有無、多い少ないが分かります。

専門分野はよほど先進的で高度な技術でなければそれほど気にしなくてもよいと思います。良心的な弁理士であれば「それは私の専門外ですので、専門の弁理士を紹介します。」と正直に答えてくれます。

料金はもちろん大事です。知財は事業の一環として取り組むものですから予算があるのは当然です。予算と相談しながら検討すればよいと思います。小さな事務所であればディスカウントなどの融通が利くことも多いようです。

なお、値引き交渉はできなくはないでしょうが、あまり強引な交渉をすると、その後の関係に影響を与えないとも限りません。弁理士といえども人間ですから気持ちよく契約して仕事に着手したいのです。

以上、いろいろと書いてきましたが、これら全ての条件をクリアしたとしても、弁理士との相性が悪ければ、それは貴方にとっていい事務所とはいえません。

「話しやすい」「説明がわかりやすい」「何でも遠慮なく尋ねることができる」「メールのレスポンスがいい」などなど。これらが?だと、その後のやりとりにおいてサイズの合わない服を無理やり着ているような違和感が常に付き纏います。最悪の場合、弁理士に対する不信感にまで繋がることもあるでしょう。

どんなに優秀な弁理士であっても、いい仕事をするためには依頼者からできるだけ多くの情報を引き出す必要があります。そのためにはお互いの信頼感がとても重要です。「この弁理士とはあまり話したくないな」と思われたら、依頼者から十分な情報を得ることができず、結果としていい仕事はできません。

ただ、相性を知るためには弁理士と何らかのコミュニケーションをとってみなければよく分からないですよね。とりあえず、これはと思う特許事務所に電話かメールでもされてみてはいかがでしょうか? ほとんどの事務所はきちんとした対応をしてくれます。費用が発生する場合には事前にアナウンスされるはずですので、その点はご安心ください。

なお、ウェブサイトを持つ特許事務所はたくさんあるので、そこに記載されている内容も参考になると思います。ただしあくまでも「参考」です。魅力的な謳い文句に溢れたwebサイトはたくさんありますが、そこに書かれていることは他の特許事務所でも多かれ少なかれ普通に行われていることだったりします。同業者から見ても優秀だなと思う弁理士のサイトが意外に質素だったりするなんてことは普通にありますし、中にはwebサイトすら用意していない弁理士もいます。

最後に、こんな弁理士だったらきっとお役に立つのでは、と個人的に大事だと思うポイントを紹介して回答の締めといたします。

・メリットだけでなくデメリットも提示する(弁理士側に不利なことも開示する)
・出願以外の手段を提示する(相談者の判断力を尊重する)
・頭の回転が速い(絶対条件!)
・きちんと会話ができる(当たり前のようで当たり前でない)
・持ち物のセンスがよい(「知的」財産を扱うものはかくあるべし)

Q3.無料相談でもきちんとした解決策は得られる?

A3.無料だからってぞんざいな対応を受けることはまずありません。きちんと話は聞いてもらえるでしょう。その点はご安心ください。

ただし、相談者が期待するような具体的な解決策はまずもらえないと考えてください。

実際に無料相談を利用された方の中にも「無駄足だった」「納得のいく回答が得られなかった」といった感想をもたれた方も多いのではないでしょうか。

一般に無料相談では個別具体的な相談内容には答えられないとされている場合がほとんどです。これはなにも回答を出し惜しみしているのではなく、委任・受任の契約関係にない相談者に対しては責任のある回答ができないというのが最も大きな理由です。

無料相談は、お金を支払ってでも相談したいと思える弁理士(士業)を探すためのお見合いの場くらいに考えた方がよさそうです。

ところで、「どうして士業の人は相談に高いお金をとるの?」という疑問(不満?)があるのは知っています。これに対しては「美容師や整体師にはお金を支払ってサービスを受けますよね?それと同じですよ。」と答えます。美容師や整体師は専門技術を裏付けとしたサービスを提供する見返りとして対価を得ることを生業としています。弁理士も法律に関する知識や見識を裏付けとしたサービスを提供することを生業としています。相談に対して的確なアドバイスを与えることもその一環なのです。

もしお金を支払って相談したのにそれでも納得がいかない、という気持ちが残るのであれば、それはQ2で回答したように弁理士との相性が悪かったのです。

きちんとした弁理士であれば、常に相談者の立場や状況を意識して応対します。相談者を無視したような持論の展開や、教え諭すような断定的な物言いなどは絶対にしないでしょう。例え相談者の夢や希望を打ち砕くような回答をせざるを得ないような状況であっても、その理由や根拠を丁寧に説明するし、解決策までは提言できないにしても、同じような間違いを犯さないためのアドバイスなど相談者にとって少しでもプラスになる材料を提供するように努めます。

ちょっと無料相談を否定するかのような内容になってしまいましたが、無料相談にも有用な活用法があります。それはセカンドオピニオンとしての利用です。例えば、ある弁理士に相談して一応の納得は得た、という場合であっても、他の弁理士の見解を知っておくことは有用です。

ですので、自分に合う弁理士を探したい、他の弁理士の見解も聞いてみたいという目的であれば、無料相談はとても有用な機会だと思います。

Q4.弁理士にはいつ(どの段階で)相談したらいい?

A4.これは弁理士によって見解の違いがありますが、おそらく全ての弁理士に共通しているのは「もっと早い段階で相談に来て欲しかった」というある種の残念な感情です。

早期治療が有効なのは医療の世界だけではありません。法律案件も早い段階であれば打つ手がたくさんあるし、逆に痛手も少なくてすみます

例えば、時間とお金をかけて進めてきた新製品開発。
でも、既に似たような特許が出願されていたら?
もし他人が既に特許権を取得していたら?

結果として大掛かりな方向修正を余儀なくされます。
もちろん他人の特許に攻撃を加えることも可能ですが、こんなことに時間とお金を使うのは本末転倒です。
他人に先を越されたら打つ手が限られてくるのはどの世界でも同じです。挽回するためには多大な労力を必要とします。

商品開発を本格的に進める前段階で、その分野における他社の取り組み、技術やデザインのトレンドが分かってさえいれば、限られた資源を最大限有効に活用することも可能になります

私はビジネスを志す方にどうしてもお伝えしておきたいことがあります。
それは「情報を制する者は戦いを制する」という言葉です。

現代には様々な情報が飛び交っています。全てを入手し、それらを咀嚼することなど不可能です。情報が溢れる今の時代だからこそ、石に惑わされず玉を見極める目と判断力が重要になってきます。

その一助となるコンサルティングや士業などの専門家をぜひ活用して欲しいと思います。

Q5.特許事務所の料金体系が分かりにくいのですが?

A5.これはその通り、本当に分かりにくいですよね。

印紙代と着手金(出願手数料)と成功報酬(登録手数料)まではよいとしても、請求項の数や図面の枚数、商標の場合だと区分の数などに応じて料金が変わってきます。依頼者の側からすると、その数が本当に必要なのかどうか判断できないので、言われるがままにしぶしぶ払った経験がある方も意外と多いのではないでしょうか?

一般に、特許事務所に仕事を依頼する場合の料金は、「基本料金」+「従量加算」になっているケースがほとんどです。基本料金は、例えば特許出願の場合は○○万円〜と記載されているスタートラインの料金です。ここに請求項や図面の数に応じて料金が上乗せされていきます。これが従量加算です。基本料金だけで済むことはまずないので、依頼する特許事務所にしっかりと確認してください。

また、特許事務所の料金体系を分かり辛くしているもう一つの理由が中間処理です。中間処理とは、出願と登録の間に発生する手続きのことで、主として拒絶理由通知への対応となります。拒絶理由通知は全ての出願において発生するものではないため、出願手数料には含まれていない場合がほとんどです。また拒絶理由通知に対応したとしても必ずしも登録されるわけではないので、登録手数料と併せて請求することもできません。従って、出願と登録の中間で行った手続きの費用、すなわち中間処理費用として、出願および登録の費用とは別に請求するということになります。

この中間処理費用も従量加算も、弁理士の側から見れば、手間のかかった案件はそうでない案件より多くの金を取るという合理的な考えの現れであり、決して暴利を貪っているわけではないのです。とはいえ、実際に想定以上の金額を請求された依頼者の納得を得るのはなかなか難しいように思います。

特許事務所に仕事を依頼する際には、料金体系とともに「必ず発生する費用・料金」と「発生するかもしれない費用・料金」についても十分な説明を受けて理解を深めてください。

※出願から登録までの流れについて、特に費用が発生するタイミングをメインにまとめてみました。参考にしてください。

それでも納得しない、もしくはもっとスッキリとした料金体系を提示して欲しい、という方もおられると思います。

ここからは宣伝になってしまいますが、弊所では料金体系の簡素化の一環として以下のオリジナルサービスを提供しております。

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中間処理費用・成功報酬が無料になるサービス

Q6.明細書の品質とは何ですか?

A6.明細書とは、発明の特徴などを記載した書類のことです。明細書に基づいて審査が行われ、最終的には特許権の範囲(強さ)が判断されます。ですので、明細書の品質とは、審査をパスできるか、競合相手を排除(牽制)できるか等の観点から評価されるものです。

ところで、審査をパスすること自体はそれほど難しいことではありません。請求項に誰も実施しないような(意味のない)要素をたくさん書き加え、新規性と進歩性さえクリアすればいいわけです。そうすれば審査官は簡単に特許査定をくれます。それは何故か?

このような無価値なものに特許を与えても、競合相手を排除することができないのを特許庁は分かっているからです。

逆に、競合相手を排除できるくらいに強力な請求項が書かれた明細書であれば、とても慎重に審査します。

つまり、この二律背反する性質を併せもつ明細書こそが質の高い明細書と言えるでしょう。明細書の品質を高めるために一番大事なことは、発明の本質を捉え、それを論理的な文章で表現する、ということに尽きると考えます。

そのため、弁理士には高度なロジカルシンキングが求められますが、その前提として、依頼者から有用な情報をいかに引き出すかがとても重要になります。

Q7.実用新案は使い道がない?

A7.巷でよく言われていることに「実用新案は権利行使に難があるので使いものにならないよ」というのがあります。

確かに権利行使に難がある(制限がある)というのはその通りです。でも、ここで考えていただきたいのは、「皆さん、そんなに権利行使をするつもりがあるのですか?」ということです。権利行使の最たるものは訴訟になりますが、裁判におけるプレッシャー、金銭面や労務面での大きな負担に耐えられる中小零細企業、個人事業主がどれだけいるのでしょうか?

これまでいくつかの係争現場に立ち会ってきましたが、最終的に勝った場合でさえ喜んでいる依頼者は一人もいませんでした。「疲れた」「無駄な時間だった」という感想ばかりです。メディアなどで原告側勝利!などと息巻いているケースはイデオロギー闘争の側面が強いからです。知的財産を巡る係争にイデオロギーは関係ありません。あるのは経済的得失の視点だけです。僅かばかりの賠償金や和解金を得たとしても、それに費やした時間を考えると、経済的には負けと同じです。

それに、知的財産権を1,2件しか保有していない状況で訴訟を起こすのはリスクが高すぎます。被告はほぼ間違いなく無効審判などの反撃を仕掛けてきますので、最悪の場合、虎の子のように大切な特許権を失うことになります。

いつも裁判しているような印象があるGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)ですが、実のところ知財に関してはほぼ全てが被告、すなわち攻められる側です。

中小零細企業、ベンチャー企業、個人事業主は、大企業のように全方面に人的資源や資金を回すことは不可能です。限られた資源の使い道には優先順位をつけなければなりません。知財においては他社を攻撃することではなく、自社の技術を守ることが第一です。自社の技術を他人に奪われたらもはや立つ術がなくなるでしょう。

攻めるための武器(矛)ではなく守るための武器(盾)として、実用新案を考えてみてはいかがでしょうか?

Q8.部分的にデザインを変えて真似されるのを防ぐことはできる?

A8.まずはこちらをご覧ください。

意匠登録第1585727号

言わずと知れたApple社のワイヤレスイヤホン「AirPods」です。

これが世に出たときは衝撃でしたね。円筒形に延びたバッテリー収納部分の形状がうどんが垂れ落ちているような姿に見えるとして「#耳からうどん」などと盛んに揶揄されていました。

この第一世代AirPodsについて、アップル社は意匠権を取得しています(意匠登録第1585727号)。

そして、アップル社は同じAirPodsについてもう一つの意匠権を取得しています(意匠登録第1585850号)。

それがこちら。

意匠登録第1585850号

違いが分かりますか?

下の方は、いわゆる「うどん部分」の部分が実線で表され、その上に繋がる「ヘッド部分」は点線で表されています。

これは「部分意匠」という非常にありがたい制度なのです。

部分意匠では全体ではなく一部分に権利が発生します。AirPodsの意匠権の場合、実線で表された「うどん部分」が権利部分となり、点線で表された「ヘッド部分」が非権利部分となります。従って、ヘッド部分の形状やスピーカー孔、ベント孔の位置や形状をいくら変えても、「うどん部分」を真似していたら意匠権の侵害ということになります。

AirPodsの形態上の特徴は「うどん部分」にあると思われますので、アップル社は部分意匠を活用することで、「うどん部分」を真似した類似品の被害から新製品を守ろうと考えたのです。

もしこれが上の意匠権だけだと、「うどん部分」を真似されても「ヘッド部分」の形状を変えられたら上手く逃げられるという悔しい思いをすることになります。

別のメーカーになりますが、このような意匠権も登録されています。

キーボード部分が青色で着色されています。これも「部分意匠」の意匠権です。点線の代わりに着色によって権利部分と非権利部分を区別しています。点線でも着色でも、権利部分と非権利部分の境界を明確にできれば表現方法は問われません。

どうです?
意匠に興味が湧いてきませんか?

弊所が提供する『6.9万円意匠出願サービス』は、この「部分意匠」にも適用できますので、真似されたくないデザインをお持ちの方はぜひご相談ください。