氏名の商標登録は難しい

氏名の商標登録は難しい

氏名を含む商標の取扱について、商標法では次のように定められています。

商標法4条1項8号(登録できない商標)
”他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)”

解りやすく整理してみます(氏名に関する箇所のみ)。

  • 「他人の氏名」を含む商標は登録できない(原則)
  • ただし、その他人の承諾を得ていれば登録できる(例外)

「他人の氏名」とは、出願人以外の人物の氏名のこと。
従って、同姓同名の他人が存在すれば、自分の氏名を商標登録することは原則としてできない、ということになります。

ブランド化した氏名なら登録できるか?

それでは、誰もが知っている著名なブランドの場合はどうでしょうか?
残念ながら、有名無名に関わらず特例措置などは一切ありません
例えば「マツモトキヨシ」や「TAKEO KIKUCHI」は誰でも知っているブランドですが、商標登録は認められませんでした。

前澤友作氏の氏名が商標登録されているのはなぜ?

一方で、前澤友作氏の氏名は商標登録されています。漢字表記の『前澤友作』(登録第6223257号)の他に、ローマ字表記の『maezawayusaku』(登録第6223259号)、『yusakumaezawa』(登録第6223258号)の全てが商標登録されています。ちなみに指定商品はアパレルに関するものです(第25類)。

これが登録された理由は、出願人(前澤友作氏)以外に「マエザワユウサク」という他人が存在しないことを特許庁が認めたからです。同姓同名のチェックには電話帳に掲載されている氏名を参照するようです。もし電話帳に「前澤裕作」さんや「前沢有策」さんが掲載されていれば、おそらく違った結果になったことでしょう。

全ての国民の氏名が電話帳に掲載されているわけではないので、それで本当に意味があるの?という気がしないでもありませんが、公平さを担保するための一応のルールとしてこのように運用されているのでしょう。

例外として、同姓同名の他人の承諾を得れば商標登録できる

なお、同姓同名の他人がいる限り商標登録はできないのか?といえば、必ずしもそうではありません。同姓同名の方の承諾さえ得られれば自分の氏名を商標登録することができます

過去に氏名ではなかったのですが、商号(会社名)を商標登録出願した際、同名の会社が存在することを理由に拒絶理由通知を受けたことがあります。商号は法人にとって氏名みたいなものですので、他人の商号と同じ商号の商標登録は原則として認められません。
このケースでは同名の2社と個別に交渉し、両方から承諾を得ることができたので、なんとか無事に商標登録することができました。しかし、全ての場合で交渉が上手くいくとは限りません。交渉すべき相手が2社と少なかったこと、交渉相手と商圏が被らなかったため理解が得られ易かったこと等の好条件が重なった結果だと思います。交渉相手が多ければ多いほど難易度は上がり、1社でも承諾に反対されたら、THE ENDとなります。