特許や商標を出願(申請)するときはトータルの費用・料金を確認しましょう!
■出願料は登録までにかかる総額のほんの一部
例えば、商標登録の場合を考えてみましょう。
①まず、登録したい商標と、その商標を使用する業務範囲を確定します。
②次に、出願書類(商標登録願)を作成し、特許庁に提出します(商標登録出願)。このとき出願料を納めなければなりません。
③出願は特許庁の審査にかけられます。現在のところ審査に着手するまでに1年近くかかっているようです。
④審査の結果、登録が認められると、登録料(特許印紙代)を納めることを条件に商標権を得ることができます(商標権設定登録)。
このように商標を登録するためには、出願時と登録時の2回に分けて料金(特許印紙代)を支払う必要があります。これには例外はありません。
出願料だけで全ての支払いが済んだと勘違いされるケースがあるようですが、登録料を納めなければ出願が却下されますので、この点は特に注意が必要です。
なお、弁理士に委任する場合は出願料と登録料の他に手数料(弁理士報酬)が発生します。
■必ず総額を確認すること
弁理士に手続きを委任する場合、特許印紙代に加えて手数料が必要になることはお話ししましたが、では一体どのくらいの費用なのか?どのタイミングで費用が発生するのか?などとても気になると思います。
しかし、この疑問に正確な数字をもって回答することは不可能なのです。というのは、弁理士の手数料には規制やルールなどはなく、それぞれの特許事務所が自由に設定しているからです。歯科医の自由診療みたいなものです。とは言ってもある程度の共通する傾向はありますので、少しだけ紹介しておきます。
ほとんどの特許事務所や弁理士は、案件の内容によって手数料に差を設けています。端的に言えば、手間がかからない案件であれば安く、手かがかかる場合は高くといった具合です。これは弁理士に限らずどの業界でも同じだと思います。
とはいえ、「あなたの案件は手間ががかるので通常より5万円高くなります。」と言われて素直に従う人はまずいません。なぜ手間がかかるのかを十分に納得していただく必要があります。
そこで、多くの特許事務所では、例えば商標の場合、区分の数(業務範囲の広さ)に応じて料金が変わってきます。特許の場合は請求項の数(発明の範囲の広さ)、書類や図面の枚数などに応じて料金が変わります。
一般に、特許事務所に仕事を依頼する場合、「基本料金」+「従量加算」になっているケースがほとんどです。基本料金は、例えば特許出願の場合は○○万円〜と記載されているスタートラインの料金です。ここに請求項や図面の数に応じて料金が上乗せされていきます。これが従量加算です。この辺りが特許事務所の料金体系がスッキリしないというか、依頼者にとって分かり辛いところだと思います。
基本料金だけで済むことはまずないので、必ず特許事務所に確認してください。商標の場合も同様です。なお、料金や費用のことを懇切丁寧に説明した特許事務所のウェブサイトも散見されますが、それでも私のような同業者から見ても複雑で、簡単には理解できそうにありません。なので、電話やメールで直に確認されることをお勧めします。ファーストコンタクトはメールで、その後のやりとりは電話でというのもありかと思います(逆のパターンもあり)。メールは確かに便利な連絡手段ではありますが、それでも電話で一度は声を聞いておくとお互いの安心感に繋がります。
■中間処理費用には要注意
また、特許事務所の料金体系を分かり辛くしているもう一つの理由が中間処理です。中間処理とは出願と登録の間に発生する手続きのことです。主として拒絶理由通知への対応となります。拒絶理由通知は全ての出願において発生するものではないため、出願手数料には含まれていない場合がほとんどです。また拒絶理由通知に対応した案件が必ずしも登録されるわけではないので、登録手数料と併せて請求することもできません。従って、出願と登録の中間で行った手続きの費用、すなわち中間処理費用として出願や登録の際の手数料とは別に請求するということになります。
中間処理費用も従量加算も、手間のかかった案件はそうでない案件より手数料が上がるという合理的な考えの現れであり、決して意味のない費用を請求している訳ではないのですが、想定していた以上の金額を請求された依頼者の納得を得るのはなかなか難しいように思います。
こんなに費用がかかるとは思ってもいなかったと後悔しないためにも、特許事務所に仕事を依頼する際には、出願時と登録時にかかる費用だけではなく、「発生するかもしれない費用・料金」についても十分な説明を受けて理解を深めてください。
※出願から登録に至る一連の流れについて、特に費用が発生するタイミングをポイントにまとめてみました。特許事務所への依頼を検討する際の参考にしてください。