ヴァイオリンのプルトのこと

ヴァイオリンのプルトのこと

来たる12月8日、所属するアマオケ(アマチュアオーケストラの略)の定期演奏会が開催されます。会場はアクロス福岡シンフォニーホール。この時期のアマオケあるあるですが、チケットノルマが割り当てられます。
アマオケの宿命としてチケットが飛ぶように売れるなんてことはありませんので、メンバーの手で地道に捌いていくしかありません。
私はとても売り切る自信がないため、いつも知人やクライアントに差し上げております。チケットを渡すとき、「渕上さんはどのあたりで弾いているの?」と聞かれることがあり、「今回は5プル裏だよ」と答えても通じることはまずないですね。
模範回答はこうです。「ステージの真ん中で一人だけ立っているのが指揮者で、その周りをヴァイオリンを始めとする弦楽器がグルっと取り囲んでいてね、僕は指揮者の左側に並んでいるヴァイオリン群の5列目の奥側にいるよ。」

2年前の演奏会(左から4人目が私)

オーケストラではヴァイオリン等の弦楽器は二人一組のペアになって演奏します。このペアに対して楽譜と譜面台は一つ。譜面台のことをドイツ語で「Pult(プルト)」と呼ぶことからヴァイオリンの席順をプルトと表現するようになりました。指揮者から近い順に1プルト、2プルト・・・と数えていきます。また、プルトを構成する2つの席のうち聴衆に近い側を「表」、ステージ奥側を「裏」と呼びます。従って、5プル裏は、指揮者から数えて5番目の列のステージ奥側となります。
ちなみに、クラシック業界では何でも略して呼ぶ習性があるようで、「5プルト」のような短い言葉ですら「5プル」と呼んだりします。

楽譜をめくるのは「裏」の役目です。なぜ裏なのか、はっきりしたことは分かりませんが、おそらくこれだろうと思われる理由があります。それは楽器を支えるのは左手の役割であるため、「表」の人が楽譜に近い位置にある左手でページをめくるのは非常に難しいわけです。逆に裏の人は右手でページをめくることになりますが、右手には弓を持っているだけなので、弓を膝上に置いたり左手の指で掴んだりして右手をフリーの状態にすることは比較的簡単なのです。

楽譜に弓の上げ下げ記号などを書き込みます。