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アマビエと商標の問題を考える(続編)

アマビエ商標が拒絶?

Twitterで「アマビエ商標が拒絶」というツイートを見かけたので、行きがかり上、簡単にコメントしてみようかと思います。

以前アップした記事”アマビエと商標の問題を考える”の中で、株式会社電通が商標『アマビエ』を出願したことについて書きましたが、その後この出願は取り下げられているので、今回の拒絶は別の会社の出願に対するものになります。

同記事には、”商標法には「こんなものは商標登録できませんよ」という不登録事由が限定的に挙げられていて、原則としてこの不登録事由に該当しない限りどんな名称でも商標登録できてしまいます。”と書きました。

特許庁は、『アマビエ』には商標登録できない理由(不登録事由)があると判断し、その理由を出願人に追知したということになります。この通知のことを「拒絶理由通知」と呼びます。

特許庁が『アマビエ』を拒絶した理由

9月下旬、特許庁から出願人宛に送られた拒絶理由通知にはこう書かれております(多少手を加えました)。

”商標『アマビエ』は、2020年の新型コロナウイルス感染拡大の終息祈願のために、SNS上にこれを描いた図などを投稿する人が続出するなどとして、話題となったものです。
また、厚生労働省が、新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とする施策の一つとして、疫病を払うとされる妖怪「アマビエ」を描いた啓発用アイコンをホームページ上で公開するなど、「アマビエ」の文字やこれを描いた図は広く一般に知られるようになるとともに、新型コロナウイルス感染拡大の終息祈願の象徴として広く使用されているものといえます。
そして、本願の指定商品(菓子・パン)を取り扱う分野においても、多数の業者によって「アマビエ」の文字やこれを描いた図が、商品に使用されている実情があります。
そうすると、商標『アマビエ』は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「新型コロナウイルス感染拡大の終息祈願の象徴」を表したものと認識するにとどまるというのが相当ですから、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものと認めます。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当します。”

これを3行にまとめると、
『アマビエ』は既に様々な媒体において「新型コロナウイルス感染拡大の終息祈願の象徴」として多用されており、世間でもそのように認識されている現状を鑑みると、特定の事業者が扱う商品の名称としては適さない。
といった感じでしょうか。

なお、冒頭でTwitterで「アマビエ商標が拒絶」と書きましたが、正確には「拒絶理由通知」が通知された段階であって、まだ拒絶になると決まったわけではありません。

今後『アマビエ』は登録できるか?

今回の特許庁の判断は暫定的なものなので、今後、出願人(代理人弁理士)が有効な反論を行えば、商標登録される可能性もゼロではありません。

今後の流れは以下のどちらかになるでしょう。
反論しない、もしくは反論しても特許庁が納得しない → 拒絶
反論に特許庁が納得した → 登録

今回の拒絶理由を見る限り、特許庁には『アマビエ』を商標登録させる意思は微塵も感じられません。おそらく審査中の他の出願の扱いもこれと同じでしょう。

とはいえ、今回の拒絶理由通知により、特定の事業者の独占的な名称として『アマビエ』を商標登録することはほぼ不可能と判っただけでも、当初の目的であった防衛の意図は概ね達成できたと思われますので、このまま反論せずに幕引きという方向も十分に考えられます。