NETISと特許はどこが違う?

NETISと特許はどこが違う?

はじめに

NETISと特許、どちらも新しい技術を扱うためか、よく比較の対象になります。
確かに似ている点はあるのですが、そもそも制度の目的が異なるため、意外なほどたくさんの違いがあります。
今回は、そのたくさんの違いのうち登録要件に的を絞り、NETISと特許の両方を扱う弁理士の視点から解説してみます。

NETISと特許の最も大きな違いは「技術の実用化」

NETIS登録にあたっての最大のポイントは、申請する新技術が「公共工事で活用できる程度に実用化されていること」にあります。
もう少し具体的に言うと、「①公共工事で求められる性能、品質、安全性などをクリアしていることを、②実験等によって客観的に証明し、③かつ第三者の求めに応じていつでも提供できる技術であること。」がNETIS登録の要件となります。

特許は着想の斬新さが重視され、実用化はあまり問題にならない

具体的な形になっていない発明は特許が受けられないのでは?と思われがちですが、実際にはそんなことはありません。発明の具体性や実用性は全く求められておらず、単に頭に浮かんだアイデアでも特許権を取得することができます。
もちろん全てのアイデアに無条件で特許が与えられる訳ではありません。そのアイデアが新しいこと(新規性)、誰でも簡単に思いつくアイデアではないこと(進歩性)の2つが必要です。
NETISにも新規性はありますが、特許の場合ほど厳密ではありません。NETISの新規性は、「従来技術に対して何をどう改善したか?」を意味します。これに対して特許の新規性は、「発明者以外の誰にも知られていないこと」を意味します。

NETISには多くのデータが必要

NETISでは、公共工事で求められる性能、品質、安全性などをクリアしていることを実験等によって客観的に証明するためのデータが重視されます。具体的には実証実験データは必ず提出が求められます。例えば、申請技術が墜落制止用器具であれば安全性能に関するデータが求められるであろうし、魚礁に関するものであれば環境性能に関するデータが必須になるでしょう。実験は第三者機関(証明書や認定書を発行する団体など)に依頼するのが一般的ですが、特定の団体が存在しない分野であれば自社で実施することもできます。
取得したデータは「実証実験報告書」のような書式に整理して提出します。実験の実施日、場所、目的、方法、結果、考察の各項目に分けて簡潔に記載する必要があります。また実験状況を撮影した写真があれば報告書に添付します。

NETISと特許、どちらを先に申請すべきか?

これは迷うことなくNETISより特許が先です。なぜなら、既に誰かに知られてしまった技術は特許を受けることができないというルールがあるからです。NETIS登録された技術はNETIS検索システムを通じて公開されるため、その後に特許出願しても「時すでに遅し」というわけです。

NETISと特許の抵触問題

NETIS申請書類には特許権の有無に関するチェック項目が設けられています。申請技術に関する特許権を所有していればその内容を記載するだけでよいのですが、所有していない場合、第三者が同じような技術で既に特許を取得している可能性があるため、国土交通省としてはこのままNETIS登録を認めるべきかどうか大きな懸念材料になります。この場合、「他社の特許に抵触していないこと」を念書(報告書)として国土交通省に提出することが求められます。
他社の特許との抵触を調べるには、特許庁が提供する特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を利用すればある程度の情報を得ることができます。特許調査には少々専門的な知識が必要になりますので、知財総合支援窓口や知り合いの弁理士などに相談されるとよいでしょう。