シトロエンと商標『PureTech』の問題
素晴らしい『PureTech』エンジン
シトロエンC3には、1.2L 3気筒ターボエンジン、通称『PureTech』が搭載されています。
『PureTech』は優れた動力特性を有しており、低回転域から発生する力強いトルクと低燃費を両立させた実用性の高いエンジンだと思います。法定速度内で走る分には何らストレスなくドライブを楽しむことができます。
しかし…商標でつまずく?
インターネット情報によれば、2014年3月にプジョーが新開発エンジン『PureTech』をプレスリリースしました。プジョーほどの大企業ですから、商標調査に抜かりはなかったとは思いますが、実はこの時点で日本における『PureTech』の商標権はスズキ株式会社に帰属していました。
ちなみに、商標権は登録された国においてのみで有効ですので、『PureTech』という名称を日本で使用しなければ何の問題もありません。
プレスリリースから半年後の2014年9月、スズキ株式会社が保有する『PureTech』の商標権の譲渡に関する申請書(商標権移転登録申請書)が特許庁に提出されています。そして、2014年11月、『PureTech』の商標権は、スズキ株式会社からオートモービル・プジョーへと無事移転されました。
ちなみに本国のフランスを含む欧州では、2012年11月にオートモービル・シトロエンが、商標『PureTech』を欧州特許庁(European Patent Office:EPO)に出願し、2013年4月に登録になっています。
対してスズキ株式会社の商標『PureTech』は、2011年1月に出願され、2011年9月に登録されていますので、出願先は異なりますが、スズキの方が出願も登録も早かったということになります。
2017年7月に日本への導入が始まったシトロエンC3。そのフロントグリルには『PureTech』のブルーのエンブレムがとても誇らしげに輝いていました。経緯はともかく、正式に商標権を所有しているので誰にも遠慮はいりません。
しかし、私のC3(2019年2月登録)にはこのエンブレムは見当たりません。一体どうしたのでしょう?
同じような疑問を持った方がいたようで、このあたりの事情が色々とネットに書かれておりました。なかには「スズキの商標権との抵触が判明したからエンブレムを外した」という情報通な意見もありましたが、前述の通り、この問題は既に解決済みです。
現在もウェブサイトやカタログでは『PureTech』を継続して使用していることを考えると、単なるコスト削減なのか、もしくは欧州や日本以外の国での商標問題が絡んでいるのか、これ以上のことは判りません。
過去にもあった車の商標問題
車名と商標については、過去にもいくつかの事例があります。
ルノーの小型車『ルーテシア』は、本国では『Renault Clio』ですが、本多技研工業株式会社(ホンダ)が登録商標『クリオ』を所有していたため、日本では『Renault LUTECIA』の名称で販売となりました。
フィアットの小型車『ブラビッシモ』は、本国では『FIAT BRAVO』でしたが、三菱自動車工業株式会社が登録商標『BTAVO』を所有していたため、日本では『FIAT BRAVISSIMO』の名称で販売となりました(絶版車)。
この2件の案件とシトロエンの案件とは似ているようで全く違います。
ルノーとフィアットは、日本市場に乗り込む前にちゃんと商標調査を行い、抵触すると判断した段階で車名を変更するという憎らしいまでにスマートな対応をみせています。
これに対し、シトロエン&プジョーは、プレスリリース後に慌てて商標権の譲渡交渉を始めるという、お粗末あまりスマートとはいえない対応です。
多少なりとも擁護するとすれば、プレスリリース前からスズキ側とは交渉を始めていて、何らかの理由でプレスリリース後の移転登録となってしまったということも考えられなくはないですが。
これからもずっとシトロエンには乗り続けたいので、かようなことでブランドイメージを傷つけることのないようお願いしたいものです。