ステマと商標の関係〜100日後に死ぬワニ

「100日後に死ぬワニ」の完結。主人公の死という厳粛な場面の余韻に浸ることも許されないまま「書籍化決定!」「映画化決定!」「グッズ・イベントなど続々!」などの大々的な告知があったことで、巷では「最初から商品化ありきだったのか?」「ステマだろ!」「死んだ途端に商品豊富すぎて草」などと、これまでになく炎上しているようです。さらにはブームの背後に広告代理店が絡んでいるとの憶測から、「電通案件」という言葉も見かけるようになりました。

実は昨日まで「100日後に死ぬワニ」のことも、またそれが一部でブームになっていることも全く知らなかったので、この件に関して特段の感情はないのですが、ステマの根拠として、商標登録のことに言及されていましたので、この点について少しだけ書いてみたいと思います。

きくちゆうき氏と商標の関係

きくちゆうき氏の「100日後に死ぬワニ」は2019年12月12日にTwitter上で連載が開始されました。

連載開始から約1ヶ月後の2020年1月16日に、商標『100日後に死ぬワニ』が商標登録出願されています。菊地祐紀(本名?)氏と株式会社ベイシカとの共同出願です。

一部で誤解があるようですが、商標は出願中であって、まだ審査もされていません。登録されるまでにあと一年はかかります

特許庁のデータベースがメンテナンス作業中でしたので、指定商品については明日以降できるだけ早急に調査して報告します。おそらく各種グッズや書籍、映像に関する商品が羅列されているだろうことは容易に予想がつきます。

株式会社ベイシカとの関係

連載開始から出願までの間に約1ヶ月のタイムラグがあります(出願の方が遅い)。

連載開始前からきくちゆうき氏と株式会社ベイシカとの間に密接な関係があったとすれば、1ヶ月も待つことなくもっと早い段階で、理想的には連載開始前に出願を済ませておくのがこの世界での定石です。ブームに火がついてから出願することの危険性は、少し前の「PPAP商標問題」などでご記憶の方も多いでしょう。

とすれば、「100日後に死ぬワニ」の影響力・訴求力(Twitterのフォロワー数etc)を奇貨とみた株式会社ベイシカは、菊地祐紀氏にアプローチし(もしくは誰かがきくち氏にベイシカを紹介した)、両者はビジネスパートナーとなり、商標を出願したという流れがみえてきます。

弁理士の目からは、きくちゆうき氏と株式会社ベイシカがいつどこで知り合ったのかという問題よりも、この出願が「共同出願」であるということにより多くの興味を惹かれます。

共同出願には問題が多い

出願人は最終的には商標権者になるため、誰が出願人になるのかの決定は非常に重要な問題です。共同出願(=商標権の共有)は法律上の制約事項が多いので、将来的に利害が対立する可能性がある場合は共同出願を避ける傾向にあります。どちらか一方を出願人(商標権者)とし、他方とは契約や覚書等で両者間の法的関係を規定するという選択肢もあります。

【以下、追記】
「100日後に死ぬワニ」の商標登録出願について詳しく調べてみました。
詳細はここで確認できます。
出願人は株式会社ベイシカと菊地祐紀氏、出願日は令和2年1月16日と前述した通りです。
注目すべきは指定商品の多種多様さです。
ロフトなどで販売されているようなグッズがほぼ網羅されています。
一つ気になったのが、「飲食物の提供」(第43類)が指定されていないこと。東京・大阪でカフェの展開を企画されているようですが。
もしかしたら他の名義で出願されているのかもしれませんが、今後この件に関して大きな動きがあるようであれば調べてご報告します。