NETIS雑感
◾️はじめに
2021年にNETIS登録申請の代理・代行を始めてから約4年が経過しました。
この間、従来の面談申請からオンライン申請に移行し、書類の捺印が廃止されるなど(一部の整備局では継続中)、NETISを巡る状況は大きく様変わりしました。この過渡期とも言える時期に幸運にも多くの技術分野、また全ての国土交通省地方整備局(北海道開発局)でのNETIS登録申請に携わることができました。
今回は、これまでのNETIS登録申請の支援・サポート経験に基づいて、NETIS登録に関して私の思うところを述べてみようと思います。あくまでも私が経験した範囲内での感想であり、とりとめのない雑感のようなものですが、これからNETIS登録を目指す皆さまの一助になれば幸いです。
◾️事前相談をスムーズに進めるためには
NETIS登録申請の最初のステップは「事前相談」から始まります。NETIS公式サイトの左上に「新規登録申請事前相談・WEB申請書」のコーナーがありますので、「作成」と書かれた黄色の丸いボタンをクリックすると必要事項を記入するフォーマットが表示されます。
フォーマットには申請者の所属や連絡先などを順に記入していきますが、問題となるのは後半の申請技術に関する箇所です。「自社の技術なんだから誰よりもよく知ってるよ。知っていることを書けばいいんでしょ?」とばかりに書き進めたくなりますが、ここの書き方を間違えるとその後のフォローに非常に長い時間を要してしまいますので要注意です。
では、なぜ長い時間を要するのか、理由はいくつかあると思いますが、最大の理由は「申請技術のポイントが相手に伝わっていない」ことに尽きるのではないかと考えます。
◾️事前相談では何をするべきか
事前相談にあたっての大前提
事前相談は、これからNETIS登録しようとする申請技術を初めて国土交通省に開示する場であり、とても大事な手続きです。NETISでは以下の観点で登録の可否が判断されますので、事前相談においてもこの点をしっかりと念頭におきましょう。
- 申請技術(新技術)が公共工事において活用できる技術として成立しているか
- 従来技術と比較して申請技術にはどのような新しさ、効果があるのか
- 効果は客観的なものか
これ以外にも留意すべきポイントはあるのですが、まずはこれらのポイントをしっかりと押さえてNETIS登録申請を進めましょう。
「①何について、何をする技術なのか?」はどう書くか
「技術の概要 ①何について、何をする技術なのか?」は、公共工事における活用という視点を意識しながら記載しましょう。具体的には、「ドローンに搭載したレーザスキャナを用いて空中から面的に地形を計測する測量システム」、「ブラスト処理時に発生する使用済み研削材や剥離物から足場材を保護する着脱式養生材」、「高濃度酸素を水中に供給することにより公共用水域の水質を浄化する技術」など、公共工事における活用シーンを想起させるように記載すればよいでしょう。
ここで注意すべきことは、比較や効果などは書かないという点です。例えば「工期を大幅に短縮」、「経済性が高い」、「従来より安全」など、ついつい書くたくなりますが、書くべきことは「何について、何をする技術なのか?」ですので、技術の原理や目的のみを端的に記載しましょう。「聞かれていることにだけ答える」、これが行政手続きの鉄則です。
「②従来はどのような技術で対応していたのか?」はどう書くか
「技術の概要 ②従来はどのような技術で対応していたのか?」は、公共工事において一般に用いられている技術を記載します。上記の例であれば、「地上の既知点に据え置いた計測機器を用いて計測していた」、「足場材をブルーシートで被覆していた」など、①に記載した内容と対比させやすいように記載するとよいでしょう。「技術の概要 ③比較対象となる従来技術」は、②に記載した内容に即した技術名称を具体的に記載すればよく、例えば、トータルステーション、養生マットなどと記載すれば十分です。
なお、従来技術については国交省から変更を指導されることがあります。従来技術を変更すると次の項目「④従来技術に対して、どこに新規性があるのか?(従来技術と比較して何を改善したのか?)」に影響があります。変更を指導された場合、その理由を問い合わせてみるのもよいと思います。理由に納得できれれば変更し、納得できなければ、変更前の従来技術の方が比較対象として適切であることを定量的に論理立てて説明することもできます。それでも変更を勧められたら素直に従って先に進めることも大事です。そうならないためにも、従来技術の選定に際しては、過去のNETIS登録の事例を参考にしたり、「土木工事標準積算基準」「港湾土木請負工事積算基準」に掲載されている技術名称を参照するなど、客観性のある根拠に基づくことをお勧めします。
「④従来技術に対して、どこに新規性があるのか?(従来技術と比較して何を改善したのか?)」はどう書くか
「④従来技術に対して、どこに新規性があるのか?(従来技術と比較して何を改善したのか?)」は、③比較対象となる従来技術に対する申請技術の新規性を記載するのですが、新しければ何でも記載してよいという訳ではなく、()内に改善とあるように、その新しさによって何らかの効果が生まれるものでなければなりません。例えば、「シートの材質を化学繊維から天然繊維に変更した」ことを新規性に挙げる場合、天然繊維に起因する効果が得られる必要があります。
新規性は、上記の例のように「技術を構成する要素の変更」の他にも、「変形」、「追加(付加)」、「サイズ変更・重量変更」、「分割化・一体化」、「施工方法の変更」、「施工内容の変更」など、効果に結びつくものであれば何でも挙げることができます。
なお、NETISでは、効果を6つの観点で評価します。「経済性」「工程」「品質」「安全性」「施工性」「周辺環境への影響」です。新規性はこれらの6つの効果のうちどれかに結びつくように記載しましょう。
◾️国土交通省と上手にコミュニケーションしましょう
現在のオンライン申請では国交省からのコメントが赤字で表示されます。コメント欄いっぱいに書かれた赤字にびっくりして意気消沈されることもあるかもしれません。NETISは書式上、同じようなことを記載する欄がたくさんあり、また各項目が緊密に相関しているため、一つのミスが他の箇所にまで波及し、結果としてコメント量が膨大になる傾向があります。そのようなときには上記のポイントを再確認して対処されてみてはいかがでしょうか。また国交省のコメントの真意が汲み取りにくいこともありますので、積極的に電話で確認するのも一つの手です。
弊所では国交省の赤字コメントがびっしり書き込まれた状態でNETIS申請代理を受任したことが複数回あります。全て無事にNETIS登録に至りましたが、これらの案件に共通してたのは、既に述べた通り、「申請技術のポイントが相手に伝わっていない」、「従来技術と新規性と効果の関連性が上手く文章化されていない」でした。最初からボタンの掛け違いが生じていた訳ですから、コメント一つ一つに対応するよりも全文書き直しの方が早いと判断し、実際にそのように対応して登録することができました。
『敵を知り己を知れば百戦危うからず』と言いますが、自社の技術(己)を知るだけではなく、国土交通省のNETIS審査の基準(敵)を知ること、これがNETIS登録申請を円滑に進める上でとても重要になります。ぜひ頑張ってNETISの早期登録を目指してください!