はじめに
2021年にNETIS登録の代理・代行を始めてから約4年が経過しました。
この間、NETISの申請方法が対面による申請からオンライン申請に変更になり、捺印が廃止されるなど(一部の整備局では捺印が求められます)、NETIS登録を巡る状況は大きく様変わりしました。このNETISの過渡期とも言える時期に多くの企業からご依頼をいただき、全ての地方整備局での申請に携わることができたのは本当に幸運でした。
今回は、これまでのNETIS登録の支援・サポートを経て気づいたことなどを述べてみたいと思います。
これからNETIS登録を目指す方の一助になれば幸いです。
事前相談は慎重に
NETIS登録の最初のステップは「事前相談」です。NETIS公式サイトの左上に「新規登録申請事前相談・WEB申請書」の項目がありますので、「作成」と書かれた黄色のボタンをクリックすると、事前相談に必要な事項を記入するフォーマットが表示されます。
フォーマットには申請者の所属や連絡先などの申請者に関する情報(申請者情報)と、申請技術に関する情報(技術情報)を記載します。特に技術情報については国土交通省の厳しいチェックが入ります。ここの書き方が不十分だったり趣旨が伝わらなかったりするとその後のフォローに時間と労力を要してしまいますので、技術情報の書き方には細心の注意が必要です。
事前相談には何を書けばよいのか
事前相談は、これからNETIS登録を申請する新技術を初めて国土交通省に開示する場です。国土交通省は事前相談で得られた情報に基づいて新技術がNETIS登録に値するか否かの判断を行います。従って、事前相談では「新技術の特徴を的確に伝える」ことが求められます。
新技術の特徴についてはフォーマットに4つの項目が示されています。
①何について、何をする技術なのか?
②従来はどのような技術で対応していたのか?
③比較対象となる従来技術
④従来技術に対して、どこに新規性があるのか?(従来技術と比較して何を改善したのか?)
ここで重要なのは、自分の思いや考えを一方的に述べるのではなく、国土交通省が各項目で何を知りたいのかを常に意識するという点です。
これを念頭におきながら各項目に何を書くべきかについて考えてみましょう
①何について、何をする技術なのか?
「技術の概要①何について、何をする技術なのか?」は、公共工事における活用という視点を意識しながら申請技術のポイントを記載しましょう。具体的には、「ドローンに搭載したレーザスキャナを用いて空中から地形を計測する測量システム」、「ブラスト処理時に発生する使用済み研削材や剥離物から足場材を保護する着脱式養生材」、「高濃度酸素を水中に供給することにより公共用水域の水質を浄化する技術」など、公共工事における活用シーンを想起させるように記載すればよいでしょう。
ここで注意すべきことは、この段階では比較や効果は書かないという点です。例えば「工期を大幅に短縮できる」、「経済性が高い」、「安全性が向上」など、ついつい書くたくなりますが、「何について、何をする技術なのか?」ですので、技術の原理や目的のみを端的に記載しましょう。「聞かれていることにだけ答える」これが行政手続きの鉄則です。
②従来はどのような技術で対応していたのか?
「技術の概要②従来はどのような技術で対応していたのか?」は、公共工事において一般に用いられている技術を記載します。上記の例であれば、「地上の既知点に据え置いたレーザスキャナを用いて地形を計測していた」、「足場材を養生マットで被覆していた」など、①に記載した内容と対比させて記載するとよいでしょう。そして「技術の概要③比較対象となる従来技術」は、据置型レーザスキャナ、養生マットなどと記載すれば十分です。
なお、従来技術について、あまり一般的ではないものを記載したり、比較対象として適切でないものを記載した場合、国土交通省から変更を指導されることがあります。従来技術の選定に際しては、過去のNETIS登録の事例を参考にしたり、「土木工事標準積算基準」「港湾土木請負工事積算基準」に掲載されている技術名称を参照するなど客観性のある根拠に基づいて選定することをお勧めします。
④従来技術に対して、どこに新規性があるのか?
「④従来技術に対して、どこに新規性があるのか?(従来技術と比較して何を改善したのか?)」は、「③比較対象となる従来技術」に記載した従来技術に対する申請技術の新規性を記載します。ここで注意すべきは()内に改善とあるように、その新規性によって何らかの効果が生まれるものでなければなりません。例えば「吸着シートの材質を化学繊維から天然繊維に変更した」ことを新規性に挙げるのであれば、天然繊維に変更したことによる従来にない効果が得られる必要があります。
なお、NETISでは新規性による効果を6つの観点で評価します。「経済性」「工程」「品質」「安全性」「施工性」「周辺環境への影響」です。新規性はこれらの6つの効果のうちどれかに結びつくように記載しましょう。
NETIS早期登録のコツ
①文章は簡潔かつ明確に記載する。
主語と述語の関係を明確に。目的語と補語を使い分ける。長文が苦手ならむしろ箇条書きでもよい(文書が得意に人に添削してもらう)。
②従来技術は類似のNETIS登録技術を参照しながら慎重に選定する。
③新規性は従来技術と比較した視点から記載する。
④新規性と効果の整合性をとる。
⑤効果の根拠となるデータや資料を必ず添付する。(根拠が不明確な効果は記載しない。)