カテゴリー: 知的財産

笑えない話

シトロエンのC3という車に乗っています。
この車、デザインのためなのかコスト削減のためなのか、物理ボタンを徹底的に排除し、液晶ディスプレイでエアコンやオーディオ等の電装系の操作を行います。このディスプレイはインフォメーションボードの役割もあり、車両に関す様々な情報が表示されます。これらの情報は原語を日本語に翻訳しているからなのか、ときどき妙なことが起こります。その最たるものが「車両ドアを閉める」という表示。 Continue reading

公正取引委員会のアンケート

弊所のクライアントから「公正取引委員会からアンケートが届いているけど、どうしたらいいでしょうか?」という相談がありました。アンケートの内容を確認すると、ある親事業者(下請法上の委託元のこと)との業務上の関わりについての調査のようです。このアンケート対象の親事業者とクライアントとの間で知的財産権の使用許諾に関する契約書を作成していたところだったので、そんな偶然もあるんだなといった感じで話を聞いていたのですが、どうやら公正取引委員会がこの親事業者から入手した下請事業者の名簿に弊所のクライアントが記載されていて、それでアンケートが送られてきたという事実が判りました。 Continue reading

9.9万円特許出願サービスについて

9月にスタートした『9.9万円特許出願サービス』
少しずつではありますが問い合わせもくるようになり、実際に特許出願に至った事案も出てきました。実際に出願書面を作成してみると、発明の内容にもよりますが、図面を別にすれば1日でほぼ全ての項目を作成することができることも分かってきました。出願書面の仕上がりについても、お客様から過分なお言葉をいただいたり、次回もお願いしますと言っていただいたり、概ね好評を得ているようで、本当にありがたいことです。

本サービスをご利用いただいた方から、「低料金で特許出願するサービスには需要があるのだから、もっと検索ワードにヒットするような構成にしたらどうですか?」との指摘を受けました。 Continue reading

NETISと知的財産

令和1年9月25日、あるNETIS(ネチス)登録技術に関する掲載情報の掲載が中止になりました。NETIS登録技術が第三者の特許権に抵触しているというのがその理由です。国土交通省が発行する「NETIS実施要領」には、「申請情報及び申請技術が、他の技術の知的財産権等を侵害したと認められたとき又は疑いがあるときは、NETIS 掲載情報の掲載中止又は削除を実施する。」と規定されています。今回の掲載の中止はこの規定が厳密に運用された結果としての措置ということなのでしょう。 Continue reading

商標の力

弊所の顧問先との打ち合わせに際に、社長から「日本政策金融公庫の刊行物に当社の事例が掲載されましたよ」と冊子を渡されました。
冊子は『知財とともに世界へ』と題され、知的財産権に関する3社の取り組みが紹介されていました。3社とも海外展開に備えて戦略的に知的財産権を取得している小規模企業です。そのうちの一社として弊所の顧問先が採り上げられ、知的財産権に関する取り組みが紹介されていました。

紹介記事を読んで特に印象的だったのは、商標登録に対して過信せず、効力よりは取引先に与える信頼感や安心感に重きを置いているという点です。
世の中に健康の万能薬が存在しないのと同じく、ビジネスに対する万能薬、即効薬は存在しないと思います。特にビジネスの場合、相手があってのものですから、その存在を常に意識しながら戦略を立てていくという地道な作業が必要になります。

商標登録を例に挙げれば、相手に与える影響を想定しながら取得していくことが有効なように思います。ここで相手とは商品を購入する消費者であり、また商品の販売を担う店舗や問屋、商社などになります。基幹商品になりそうなものについては商標登録し、長く使用し続けることで、消費者との間に共感や信頼感などを構築することができます。また取引者に対しては、商標への真摯な取り組みが事業パートナーとしての信頼性の向上に繋がります。

ブランドというものは一朝一夕にできるものではなく、共感や信頼感など他者との間の継続した関係性を一つ一つ積み上げていくことでしか構築できないものでではないでしょうか。

米国商標『KIMONO』を巡る一連の騒動について(その4)

前回の記事の最後の部分で「大切な商標は他人に取得させない」と書きました。
では他人に商標権を取得させないためにはどのような手段があるでしょうか?
いくつかの手段が考えられますが、代表的なものとしては、①他人の行動を監視し、大事に至る前に手を打つ②自らが先に商標権を取得する、の何れかになるでしょう。

①は、他人が出願した商標の登録を阻止するために特許庁に情報提供を行うのが一般的です。商標は出願されるとその内容が公開されます。自分にとって不都合な商標が出願されていることを知った第三者は、その商標が登録できない正当な理由を付した情報提供を行うことができます。
審査官は提供された情報を参酌しながら審査を行いますが、必ずしも情報提供者の思惑通りに審査が進むとは限りません。登録査定となった場合には異議申立、無効審判など費用と時間を要する手段しか残されていません。
そもそも誰がいつ出願するかなんて分からないわけですから、膨大な数の公開公報に常に目を通しておく必要があります。専属のスタッフがいるような大企業や特許事務所なら可能でしょうが、多くの場合あまり現実的な対応とはいえません。

②は、最も有効な防御手段となります。日本を始め世界のほとんどの国は先願主義を採用しています。先願主義とは、一番最初に出願した者が権利を得ることができるというルールです。例えば、Aさんは世界的大企業、Bさんは無名な個人であったとしてもBさんが先に出願していればAさんは商標権を取得することはできません。Aさんは名称を変更するか、Bさんからライセンスまたは譲渡を受けなければなりません。このようなリスクを冒したくなければ、Bさんより先に出願する。ただそれだけでいいのです。

『KIMONO』は普通名称だから大丈夫?
他国の文化を尊重する良識は世界共通だから話せばわかるはず?
なにか問題があれば市長や大臣が話をつける??

商標権(その他の知的財産権)には先願主義という共通のルールがあって、誰にでも利用の門戸が開かれています。上手に利用すれば心強い味方になってくれますが、敵にまわすとこれほど怖いものはありません。

今回の一連の騒動から何らかの教訓を得るとすれば、自戒の念も込めて以下のようにまとめることができそうです。
①自らのビジネスに関連のありそうな制度について正しい理解を心がける
②その制度を利用した場合と利用しない場合の得失を勘案する
③兵は拙速を聞く(孫武)
④道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である(二宮尊徳)


米国商標『KIMONO』を巡る一連の騒動について(その3)

前回の記事の最後に「それでは、米国において『KIMONO』は商品「被服」の普通名称として認識されているか?が大きな問題となります。」と書きました。

適正に審査が行われている限り、KIMONOが被服の普通名称として認識されていれば登録されないはずです。
しかし、KIMONOが普通名称に該当しないと思われる商品、例えば、カーダシアン側が出願した「かばん類」や「下着類」に対しては商標登録される可能性は十分にあります。

ここで注意すべきことは、ある名称が普通名称であるか否かを判断するのは行政や司法であるという点です。もちろん市場における認知度や商品の直接の需要者となる大衆の感覚というものも考慮には入れるのでしょうが、最終的には一人または数人の公人によって判断されます。もし誤った判断(今回の騒動に対して批判の声を上げた側に不利な判断)がなされた場合は商標登録(もしくはその前段階の登録査定公告)となります。この段階になると登録を取り消すためには相当の労力(と資金)が必要になります。もちろん勝てるという保証はどこにもありません。

とすれば、リスク管理の観点からとるべき手段はただ一つ、大切な商標は他人に取得させない、ということです。

(次回へ続く)

米国商標『KIMONO』を巡る一連の騒動について(その2)

前回の投稿から少し間が空きましたが、商標『KIMONO』を巡る一連の騒動について思うところを数回に分けて述べていきます。
すでに旬は過ぎた感はありますが、商標的には色々と考えさせられることも多い事件でしたので、みなさんが商標を考えるときの参考にしていただければいいかな〜といった緩めの感じで進めていきます。

この事件を巡っては、賛否両論(否が圧倒的ですが)様々な意見がネット上を飛び交っていますが、否定的な意見をまとめると、
①普通名称を私物化するなどけしからん!
②ましてや下着の名称にするなんて以ての外だ、我が国の文化を侮辱しておる!
この2つに集約できるかなと思います。

ここで、普通名称は商標登録できるのかが問題となりますが、答えは、商標登録できないということになります。

「普通名称」とは、その商品または役務(サービス)の一般的な名称であると認識されるに至った名称をいいます。例をあげると、商品「りんご」について『Apple』、役務「小口貨物を目的地まで配送するサービス」について『宅配便』は普通名称とみなされ、商標登録を受けることができません。

ここで注意していただきたいのは、「その商品または役務(サービス)」という部分です。『Apple』は商品「りんご」については普通名称であるため商標登録できませんが、商品「スマートフォン」については普通名称ではないため商標登録できます(他に拒絶理由がない場合)。

『KIMONO』は商品「被服」に対しては普通名称であると考えられるため、商標登録できないのですが、他の商品については普通名称ではないため商標登録できる場合があります。実際に商品「化粧品」「せっけん」に対して商標『KIMONO』が登録されている例(商標登録第5757200号)もあります。

ちなみに先に例にあげた『宅配便』とは一字違いの『宅急便』は、ほぼ全ての商品および役務の分野において、ヤマト運輸株式会社もしくはヤマトホールディングス株式会社が商標権を所有しています。

それでは、米国において『KIMONO』は商品「被服」の普通名称として認識されているか?が大きな問題となります。

(次回へ続く)

米国商標『KIMONO』を巡る一連の騒動について

米国タレントのキム・カーダシアンさんが自身のプロデュースするインナーウェアのブランド名として『KIMONO』を米国で商標登録出願した事件?は、本人のTwitterでブランド名の変更を表明したことで一応の収束がみられそうな感じです。

この件に関する世間の反応は、インターネットを見る限りでは「日本文化への侮辱」「文化の盗用、私物化」などかなり手厳しいようです。

著名な着物ブランドが多数存在する京都市の門川市長は、「私たちは、『KIMONO』『きもの』『着物』の名称は、きものやきもの文化を愛する全ての人々の財産であり、私的に独占するものではないと考えます。」という旨の文書をカーダシアンさん側に送付し、また世耕経済産業大臣は、Twitterで「着物は日本が世界に誇る文化です。しっかりと審査してくれるよう、アメリカ特許商標庁にも話をしたいと思います。」と投稿したそうです。

あくまでもインターネットを通じての情報のみで詳しい背景などは全く分かりませんが、部外者かつ商標の専門家としての立場から眺めると、この件に関してはいくつか気になることがありますので、次回の記事から少しずつお話しさせていただきます。

(次回へ続く)