PrimeReading(プライムリーディング)

アマゾンのプライムリーディングで見つけた『こうふく画報』
サムネイルに表示された着物姿の女性の構図と淡い色使いに惹かれて読み始めた作品です。
大正時代を舞台とした市井の人々を描くオムニバス形式の掌編集。
一話一話が本当に短く、あっという間に読み終えましたが、読後はほっこりした幸福感に満たされます。
袖すり合うも多生の縁。人と人とが積極的に関わり合っていた時代。もちろんそうしないと生活が成り立たなかったという面はあるのでしょうが、ここには自分が自分がという自我が肥大化したような人間は一人もいません。他人との関わり合いの中で生きて、ささやかな幸せを実感する。そんな話が淡々と描かれています。

全ての掌編が素晴らしいのですが、その中でいくつか素敵だなと思う場面があったので、ちょっとだけ紹介させていただきます。お弁当を作る主婦の話。
それまでは料理が得意な女中が夫と子供の弁当を作っていましたが、あるとき思い立って料理教室に通いはじめ、自ら弁当を作ることに。
もちろん味の差は歴然。不満を漏らす子供に父親がこう言います。
「料理をするために費やされる時間は、作る人の寿命の一部だ。」

日々このような気持ちでいれば全てのことに感謝できるでしょうね。世の争い事の大部分は感謝の気持ちの欠如からきているのかもしれません。

ある医師の話。
入院生活に退屈して悪戯ばかりしている少年に宿題を出し、課題を一つこなす度に与えるおはじきが瓶に一杯になったら景品を与えると約束。
少年は頑張って課題をこなし瓶を一杯にします。
医師はその瓶を受け取ると、ハンカチを被せ、次にハンカチを除けると金平糖で一杯になった瓶が現れます。
驚く少年に医師はこう言います。
「医者はこういうこともできるんだ。君は初耳かもしれんがね。」
その後、自らも医師になった少年は、注射を嫌がる児童をなだめるために金平糖の手品を見せながらこう言います。
「医者はこういうこともできるんだよ。君は初耳かもしれないけどね。」

いつかこんなこと言ってみたいですね。
「弁理士はこういうこともできるんですよ。貴方は初耳かもしれませんが。」