笑えない話

シトロエンのC3という車に乗っています。
この車、デザインのためなのかコスト削減のためなのか、物理ボタンを徹底的に排除し、液晶ディスプレイでエアコンやオーディオ等の電装系の操作を行います。このディスプレイはインフォメーションボードの役割もあり、車両に関す様々な情報が表示されます。これらの情報は原語を日本語に翻訳しているからなのか、ときどき妙なことが起こります。その最たるものが「車両ドアを閉める」という表示。
普通であれば、「あれっ、半ドアだったかな?」と思うところですが、これが「vehicle close」の誤訳だったというオチです。運転中に前の車両と接近したとき、ピロロ〜ンという警告音とともに「車両ドアを閉める」と表示されていたのですが、本来であれば「接近注意!」とでも翻訳すべきでしょうね。

永年のイタフラ車乗りとしては、この程度のことは笑って済ませられる程度には鍛えられている(飼い慣らされてる?)のですが、いざ自分の仕事に置き換えて考えてみると、これはエライことです。

弁理士の仕事の一つに海外への特許出願手続きがあります。ほとんどの場合、その国の代理人と連絡を取り合いながら手続きを進めていくのですが、最大の問題は翻訳です。日本語で作成した明細書(特許書面)をその国の言語に翻訳しなければならないのですが、英語であれば多少の苦労はあっても翻訳文の内容を理解することができるので、誤訳があれば指摘することができます。しかし他の言語の場合、誤訳があったとしてもそれを見つけて指摘することは非常に困難になります。

経験上ではありますが、日本語→他の言語への翻訳において誤訳等が発生するパターンのうち最も多いのは、元の日本語に問題がある場合です。翻訳者が元の日本語を正しく理解できていなければ、たとえどんなに優れた翻訳であっても、発明者や出願人の意図からズレたものになってしまいます。そこで弁理士としては、次の点に注意して日本語の明細書を作成すれば、誤訳の誘発を少しでも減らすことができるのではないかと考えます。

①一文一意を厳守する
②句読点は正しく用いる
③特許業界特有の造語は使用しない
④接続詞の使い分けを意識する
⑤全体から細部へ
⑥静的なものから動的なものへ

この他にも注意すべき点はありますが、まずはこの辺りから意識してみてはいかがでしょうか。
自戒の念を込めて