米国商標『KIMONO』を巡る一連の騒動について(その4)

前回の記事の最後の部分で「大切な商標は他人に取得させない」と書きました。
では他人に商標権を取得させないためにはどのような手段があるでしょうか?
いくつかの手段が考えられますが、代表的なものとしては、①他人の行動を監視し、大事に至る前に手を打つ②自らが先に商標権を取得する、の何れかになるでしょう。

①は、他人が出願した商標の登録を阻止するために特許庁に情報提供を行うのが一般的です。商標は出願されるとその内容が公開されます。自分にとって不都合な商標が出願されていることを知った第三者は、その商標が登録できない正当な理由を付した情報提供を行うことができます。
審査官は提供された情報を参酌しながら審査を行いますが、必ずしも情報提供者の思惑通りに審査が進むとは限りません。登録査定となった場合には異議申立、無効審判など費用と時間を要する手段しか残されていません。
そもそも誰がいつ出願するかなんて分からないわけですから、膨大な数の公開公報に常に目を通しておく必要があります。専属のスタッフがいるような大企業や特許事務所なら可能でしょうが、多くの場合あまり現実的な対応とはいえません。

②は、最も有効な防御手段となります。日本を始め世界のほとんどの国は先願主義を採用しています。先願主義とは、一番最初に出願した者が権利を得ることができるというルールです。例えば、Aさんは世界的大企業、Bさんは無名な個人であったとしてもBさんが先に出願していればAさんは商標権を取得することはできません。Aさんは名称を変更するか、Bさんからライセンスまたは譲渡を受けなければなりません。このようなリスクを冒したくなければ、Bさんより先に出願する。ただそれだけでいいのです。

『KIMONO』は普通名称だから大丈夫?
他国の文化を尊重する良識は世界共通だから話せばわかるはず?
なにか問題があれば市長や大臣が話をつける??

商標権(その他の知的財産権)には先願主義という共通のルールがあって、誰にでも利用の門戸が開かれています。上手に利用すれば心強い味方になってくれますが、敵にまわすとこれほど怖いものはありません。

今回の一連の騒動から何らかの教訓を得るとすれば、自戒の念も込めて以下のようにまとめることができそうです。
①自らのビジネスに関連のありそうな制度について正しい理解を心がける
②その制度を利用した場合と利用しない場合の得失を勘案する
③兵は拙速を聞く(孫武)
④道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である(二宮尊徳)