月別: 2019年7月

米国商標『KIMONO』を巡る一連の騒動について(その3)

前回の記事の最後に「それでは、米国において『KIMONO』は商品「被服」の普通名称として認識されているか?が大きな問題となります。」と書きました。

適正に審査が行われている限り、KIMONOが被服の普通名称として認識されていれば登録されないはずです。
しかし、KIMONOが普通名称に該当しないと思われる商品、例えば、カーダシアン側が出願した「かばん類」や「下着類」に対しては商標登録される可能性は十分にあります。

ここで注意すべきことは、ある名称が普通名称であるか否かを判断するのは行政や司法であるという点です。もちろん市場における認知度や商品の直接の需要者となる大衆の感覚というものも考慮には入れるのでしょうが、最終的には一人または数人の公人によって判断されます。もし誤った判断(今回の騒動に対して批判の声を上げた側に不利な判断)がなされた場合は商標登録(もしくはその前段階の登録査定公告)となります。この段階になると登録を取り消すためには相当の労力(と資金)が必要になります。もちろん勝てるという保証はどこにもありません。

とすれば、リスク管理の観点からとるべき手段はただ一つ、大切な商標は他人に取得させない、ということです。

(次回へ続く)

平戸の遣唐使

平戸市内を移動中に「弘法大師渡唐解纜之地」という案内板が目に入りました。
「解纜って何?」
時間に余裕があったのでちょっと立ち寄ってみました。
辞書で調べてみたところ、解纜(かいらん)とは、纜(ともづな)を解く=出帆のことなのだそうです。
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米国商標『KIMONO』を巡る一連の騒動について(その2)

前回の投稿から少し間が空きましたが、商標『KIMONO』を巡る一連の騒動について思うところを数回に分けて述べていきます。
すでに旬は過ぎた感はありますが、商標的には色々と考えさせられることも多い事件でしたので、みなさんが商標を考えるときの参考にしていただければいいかな〜といった緩めの感じで進めていきます。

この事件を巡っては、賛否両論(否が圧倒的ですが)様々な意見がネット上を飛び交っていますが、否定的な意見をまとめると、
①普通名称を私物化するなどけしからん!
②ましてや下着の名称にするなんて以ての外だ、我が国の文化を侮辱しておる!
この2つに集約できるかなと思います。

ここで、普通名称は商標登録できるのかが問題となりますが、答えは、商標登録できないということになります。

「普通名称」とは、その商品または役務(サービス)の一般的な名称であると認識されるに至った名称をいいます。例をあげると、商品「りんご」について『Apple』、役務「小口貨物を目的地まで配送するサービス」について『宅配便』は普通名称とみなされ、商標登録を受けることができません。

ここで注意していただきたいのは、「その商品または役務(サービス)」という部分です。『Apple』は商品「りんご」については普通名称であるため商標登録できませんが、商品「スマートフォン」については普通名称ではないため商標登録できます(他に拒絶理由がない場合)。

『KIMONO』は商品「被服」に対しては普通名称であると考えられるため、商標登録できないのですが、他の商品については普通名称ではないため商標登録できる場合があります。実際に商品「化粧品」「せっけん」に対して商標『KIMONO』が登録されている例(商標登録第5757200号)もあります。

ちなみに先に例にあげた『宅配便』とは一字違いの『宅急便』は、ほぼ全ての商品および役務の分野において、ヤマト運輸株式会社もしくはヤマトホールディングス株式会社が商標権を所有しています。

それでは、米国において『KIMONO』は商品「被服」の普通名称として認識されているか?が大きな問題となります。

(次回へ続く)

米国商標『KIMONO』を巡る一連の騒動について

米国タレントのキム・カーダシアンさんが自身のプロデュースするインナーウェアのブランド名として『KIMONO』を米国で商標登録出願した事件?は、本人のTwitterでブランド名の変更を表明したことで一応の収束がみられそうな感じです。

この件に関する世間の反応は、インターネットを見る限りでは「日本文化への侮辱」「文化の盗用、私物化」などかなり手厳しいようです。

著名な着物ブランドが多数存在する京都市の門川市長は、「私たちは、『KIMONO』『きもの』『着物』の名称は、きものやきもの文化を愛する全ての人々の財産であり、私的に独占するものではないと考えます。」という旨の文書をカーダシアンさん側に送付し、また世耕経済産業大臣は、Twitterで「着物は日本が世界に誇る文化です。しっかりと審査してくれるよう、アメリカ特許商標庁にも話をしたいと思います。」と投稿したそうです。

あくまでもインターネットを通じての情報のみで詳しい背景などは全く分かりませんが、部外者かつ商標の専門家としての立場から眺めると、この件に関してはいくつか気になることがありますので、次回の記事から少しずつお話しさせていただきます。

(次回へ続く)