アマビエと商標

株式会社電通『アマビエ』を商標登録出願したことで、ネット界隈では、「電通案件」だの「D案件」だのといったいつもの炎上が始まっているようです。
炎上は傍から見ている分には楽しいのですが、当事者が反論してこないことをいいことに、往々にして発言者側の勇足というか、明らかに間違った知識に基づいた過激な発言などをみるにつけ、「なんだかな〜」といった気分に苛まれます。

公開商標公報によると、電通の出願は、商標は『アマビエ』(標準文字)、指定商品(役務)は、アプリ、広告および小売、放送、デザインなど全部で4区分です。
何れも電通の本業に直結する分野ばかりであり、一部の発言にあるような網羅的なものではありません。むしろ本業を円滑に遂行するための主として防衛的な観点からの出願であって、極めて真っ当な企業活動であると言えます。

なお、電通以外にも現時点で10以上のアマビエ関連の出願があるようです。指定商品としては、お菓子や酒、マスク等の衛生製品がほとんどです。変わったところでは、ある宗教法人(神社)が「お守り」について出願していました。

今回の一連の炎上のなかで、「『アマビエ』のような自分が考えた名称でないものを商標登録するとはけしからん」的な発言が多かったのですが、これも大きな誤解です。
商標法には、「こんなものは商標登録できませんよ」という不登録事由が限定的に挙げられていて、原則としてこの不登録事由に該当しなければどんな名称でも登録できてしまいます。
不登録事由には「他人が考えた名称」という項目はありませんので、これを理由にアマビエ関連の出願が拒絶されることはありません。他人の商標として周知となっている名称であれば商標登録できませんが、現時点で『アマビエ』が商品やサービスの名称として周知であるかと言われたら、答えはノーでしょう。

このまま『アマビエ』が商標登録されたとしても、名称それ自体に独占権や排他権が生じるわけではなく、特定の商品やサービスの名称として使用する権利が発生するだけなので、いわゆる暖簾(のれん)として使用しない限りは誰でも自由に『アマビエ』を使うことができます。

「他人が考えたアイデア(発明)を出願するのはダメだけど、他人が考えた(自分が考えたわけではない)名称を出願するのはダメじゃない。」
これだけでも覚えていただけたら幸いです。
もちろん法律的にはOKであっても商道徳的にはどうなの?という問題はありますね。
これについてはいつかお話しできたらと思います。